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2007年2月11日 (日)

団長閣下の暴言08

傾国の人々

INTRODUCTION 落ちた星

 ヒロインという存在がいる。いるだけでシナリオの引きとなる便利な存在である。

 いや、かつてはそうだった。かつてのプレイヤー達は妄想が激しく、マスターが「美女がそこにいる」と言っただけで、脳内会話が成立するほどストーリーを作り上げることができた。そしてそのストーリーを実現すべく、必死でロールプレイしたものだ。

 しかし、最近の初心者にそれを要求するのは難しい。ヒロインをただぽつねんと置いていても、邪魔だとばかりに足蹴にされかねない。

 大きな理由の一つにギャルゲー(女性向けならボーイズゲーム)がある。この業界の少なからぬプレイヤーがギャルゲーに手を出している。

 それが悪いとはいわない。私だって好きだ。だがこれに対抗するとなると、難しい。とても難しい。向こうには絵という武器がある。その時会話しているキャラクターのキャラ絵が目の前にある。何たる臨場感か!

 加えてこの数年のギャルゲーはほぼ例外なく、声がついていて本当に喋る。対するこちらは、自らのダミ声だけだ。本職の声優相手に、どう対抗しろというのか。

 仮に私がもう一人目の前にいたとして、こいつが「おにいちゃん・・・」などと熱演を始めようものなら、私は机をひっくり返すか、そいつか喋らなくなるまで殴り続けるだろう。

 かつて私は美女のロールプレイをしていて、本当に殴られたことがあるが、気持ちは
大変よく分かる。私は殴った彼を全く恨んではいない。

 更に最近のネットゲームに至っては、3Dの上に呪文を唱えればスカートがめくれ、喋れば乳が揺れる。絵的にはまだ萌え要素が弱いが、いずれイリュージョンやTeaRoomが参入すれば、その威力は想像を絶しよう。

(編集部注1:どちらも3Dエロゲーメーカー。極めて高い技術を腐った内容に容赦なく注ぎ込む、漢らしいメーカー。ていうか、参入はしないでしょう)

 私が初心者だった頃にはそんなものはなかった。RPGと言えば赤箱。コンピュータではロバートとロードブリティッシュが大暴れしていた時代である。

 ヒロインはおろかモンスターの形状ですら、D&Dのマニュアルと水木しげるの妖怪図鑑西洋編(ここで描かれているエルフは、なかなか衝撃的である)から類推するしかなかった。

 まあそんな訳で、想像は必要不可欠な技術だったのだ。そんな経験をしていない初心者に対し、ヒロインとか可愛い女の子という記号だけで萌えろと言うのは暴挙だ。そこで今回はTRPGならではのヒロイン活用術を学んでゆこう。

LESSON1 妄想戦士の視点

 まず我々が心しなくてはいけないことがある。TRPGプレイヤーは外見的記号では萌えない。

 妄想戦士ヤマモトを読むまでもなく、世間で言われている萌えの半分以上は外見的記号や設定的記号、すなわち眼鏡、メイド、ネコミミ、巨乳といった視覚効果のあるものと、血の繋がらない妹、不幸な生い立ち、実は男の子などの、対象に特別な視線を向けさせる背景設定である。

(注:・・・「実は女の子」ではなくて?)

(注:『妄想戦士ヤマモト』とは、カミングアウトし尽くしたオタク達が萌えを追求するギャグマンガ。月刊アワーズにて連載中)

 これがマンガやギャルゲーなら良い。大変、良い!だが生憎、外見的記号はTRPGでは使えない。いや、使えないとは言い切れないのだが、効果的に使うのは極めて困難である。

 理由は簡単だ。

 外見的な記号は実際に視覚に訴えないと効果のない、光学兵器なのだ。特にネコミミ! こいつは卑怯だ。大抵の可愛い系の絵にチョイチョイとネコミミを足すだけで、その破壊力を数段上げてしまう。

 だが、レイヤーの女の子にネコミミをつけても違和感があるだけだ。何故だ!何なのだこの違和感は!

(注:コスチュームプレイヤーの略。ていうか好きなんですか、団長?)

 ・・・話を戻そう。ゲームやマンガでは、このネコミミヒロインが常に目の前にいる。
 対してTRPGで目の前にいるのは、ネコミミヒロインを演じる重厚感溢れるマスターである。

 駄目だ。萌えない!

 まず絵がいる。しかもいろんな表情バリエーションの。それらを的確なタイミングで見て、初めてネコミミや眼鏡は意味をもつのだ。全てのマスターがそんな絵を用意するのは、無論不可能である。

 では設定的記号はどうか。設定的記号とはプレイヤーが感情移入しやすい、もしくは興味をもつようなヒロインの背景である。

 これは一見使えそうである。が、意外に難しい。コンピュータゲームや小説なら、的確なタイミングで隠されていた情報をプレイヤーや読者に与え、感情移入を促すことができる。

 ところがTRPGでは、喋りたがるプレイヤーとの会話の中で、情報を与えるタイミングを探らなければならない。しかも大抵のセッションではプレイヤーは複数だ。

 それだけでも大変なのに、さらにNPCの演技も交えながら、プレイヤーが理解できるように、ヒロインの立場を説明しなければならない。

 単に説明するだけだと、プレイヤーが理性だけで認識してしまう。ロールプレイを交えて、わずかでもプレイヤーの心に訴えなければならない。これには入念な準備が必要だ。

 結論から言えば、設定的記号は萌えに限らず、ストーリー重視のマスター達にとっては絶対に外せない。

 だがプレイヤー達をヒロインに釘付けにしようという萌えマスターには、これの活用より先に習得するべき技術がある。それが状況的記号の活用だ。

LESSON2 ロールプレイ

 状況的記号とは会話や動作などの、目の前で行われる行動に含まれる萌えの因子である。つまり、ロールプレイをしろ!ということである。

 ただし、無理に声色を作ったり、語尾に「にょ」とか付けろというわけではない。というかやめろ。

 まずマスター自身が恥ずかしいし、そのラインを突き抜けたとしても、それに相対するプレイヤーにとっては単なる苦痛だ。

 まず、マスターである自分と、NPCであるヒロインをきっちり分離しろ。そうしないとプレイヤー達もヒロインとマスターの分離ができない。分離ができない限り、プレイヤー達はヒロインを一個の人格と見ることができない。

 ヒロインのロールプレイが恥ずかしいと思うのは、自分の中でヒロインが分離できていないのだ。何しろ傍から見れば、美女の物真似をする怪しい人でしかない。それを自覚しているからこそ恥ずかしいのだ。

 まず見方を変えようマスターはNPCを演じようとしてはいけない。
 NPCを表現しているのだと考えよう。

 これまで多くの本で、TRPGのロールプレイとはプレイヤーキャラクターを演じることだと書かれてきた。間違いではないが、大変誤解を産みやすい表現である。

 ロールプレイとは演技である、という誤解である。TRPGが会話によって成立するゲームである以上、演技とは台詞の言い方ということになる。

 実際のセッションでは、行動宣言やダイスロール、謎解きや相談などにも多くの時間が割かれる。それら全てがプレイヤーキャラクターという人格を表現している。

 そう考えれば、行動宣言だって立派にロールプレイと言える。重厚かつ熱気に溢れた漢が、迫真の演技をもって15歳の少女を演じるのが正しいロールプレイではない。

 無論、そういうアプローチもアリなのだろうが、お勧めはしたくない。マスターにとっての正しいロールプレイとは、プレイヤー達にNPCを一個の人格として捉えさせることだと私は考えている。

 話をヒロインに戻そう。ヒロインを売り込むのに、会話だけで攻め込むのは下策である。むしろ、会話はマスターにとって最大の弱点だと認識するべきだ。

 少なくとも私は、女の子会話が得意な筋肉質のマスターとは、お友達になりたくない。有効な状況的記号は、行動の中にこそある。

LESSON3 萌えで構成するヒロイン像

 状況的記号の活用には三つの基本パターンと、いくつかのタブーが存在する。すなわち、

1.会話に伴う状況

 くいっと袖が引っ張られるよ。目が合うと彼女はそっぽを向くけどね。でも手は放さない(笑)。

 NPCとの会話中、プレイヤーにはそのシーンの画像は見えていない。目の前に見えるのは、むさ苦しいマスターの顔だけだ。プレイヤーにはシーンを想像してもらうためには、会話の前に一言付け加えることが重要だ。

 「うつむきながら~と言うよ」とか「無理に明るく~と言う」などと一言加えるだけで想像のしやすさがまるで違う。

 嘆いている少女の呟きが、マスターを見る限りPCを脅しているようにしか見えなかったとしても、その前に一言「少女は涙をこらえながら~って呟くよ」と言えば多少演技が下手でも、ため息をつきつつもイメージをしてくれるはずだ。

 発展形としては、行動のみというのも重要だ。会話とはキャッチボールだから、必ず返事をしなくてはならないという意識が、慣れていないマスターには強い。だが、無言の行動は時に言葉より雄弁なことがある。

 大体、悲しいときや嬉しいときに、自分の感情を「悲しいです」とか「嬉しいです」などと口に出すことなど滅多にない。対象となる事象に対しての感想や礼の言葉、否定などの間接的な表現で、感情は表現されることになる。

 より感情が高ぶったときには、何も言わない、若しくは言えない。基本形なら「悲しそうに~と言うよ」と説明する場面を考えてみよう。

 「彼女は何も言わないよ。ただ、みるみるうちに涙目になって顔を逸らすよ」

 どちらがぐっとくるかと言えば、こちらの方がイタイに決まっている。感情をマスターが説明せず、行動のみを提示するということは、プレイヤーに否応無しにNPCの感情を想像させることになる。

 この想像させる、というのが重要である。

 うわ、泣いちゃったよ。なにか言ってくれよ。俺か?俺が悪いのか?

 もしかして、俺って悪人?

 こう思わせたら勝ちだ。この時点でプレイヤーはマスターとNPCを分離して考えている。

2.意外な反応

 「ばかぁっ!」

 早い話、NPCが予想とは違う行動を取るのである。喜ぶはずが怒っている(実はPCを心配てしていたという伏線)、突然よそよそしくなる(実はPCは父の仇だった)、適当な相づち(話を聞いていないだけ)などである。

 例を見れば分かる通り、設定的記号と極めて絡めやすい。加えて、PCだけでなくプレイヤーにとっても意外な反応であるため、プレイヤーに伏線をアピールしやすい。

 この方法もまた、反射的にプレイヤーにNPCの心を類推させる。意外であるということは、プレイヤーの理解の範疇を一瞬にしろ越えたということだ。

 プレイヤーは自分が管理していない情報に、危険を感じる特性がある。意外というその一点は、プレイヤーにとって強烈な引きとなるのだ。

 その上で、その隠された原因が萌える設定的記号なら、真実を知ってしまったPCは対応せざるを得なくなる。プレイヤーは罠と知っていながら、そこに飛び込むしかないのだ。なんと悪辣にして狡猾な手法であろうか。

3.他のNPCからの情報

 「お嬢様はそのような方ではありませんっっ!」

 本来は「意外な反応」のバリエーションなのだが、大変使い勝手が良いので別項目とした。ある性格設定(大抵は悪印象)のNPCについて、その萌える裏の顔を他のNPCから教えるという方法である。

 本人が意外な反応を見せる場合、状況が限定されることが多く、マスター自身のアドリブ能力に頼る所が大きい。

 対して他人からの情報の場合、NPCとの会話にさえ入れば、比較的容易に情報を与えることができるし、設定的記号とも絡めやすい。

 ミッションを解決するために必要な情報をNPCに語らせるのは、基本中の基本である。それだけにプレイヤー達は、その内容に大きな興味をもって聞こうとする。

 ミッションとは直接関係のないヒロインの内面を、彼らの口から語らせたとしても、その情報を認識してくれる。これは重要である。

 硬派とヒロインに対する無関心が同一のものと勘違いしているのか、はたまたマスターの見苦しい萌え演技に辟易したのか、昨今のプレイヤー達はミッションの解決に関係のないヒロインの行動は、無意識に流してしまうことが多い。

 で、マスターは思うわけだ。ウチのプレイヤーは人非人ばっかりだ。

 否定はしない。だが多くの場合、原因は他にある。連中はヒロインを一個の人格として認識していないのだ。風景や現象と同列に見ているのだ。そこでヒロイン本人が自己主張しても、ただの現象扱いである。場当たり的な対応は目に見えている。

 だからこそ情報源NPCからの情報という、プレイヤーが意識的に集中する場での主張が重要なのである。

 これら三つを効果的に使うために、設定的記号と絡めるのが重要だ。ヒロインの性格や行動が設定的記号とリンクしているからこそ、キャラクターに厚みを持たせることができるのだ。

 背景の世界観や育ち、周囲の人間達による影響をどう表現するかによって、ヒロインの立ち位置を、プレイヤー達に説得力をもって認識させることができる。

 逆に言えば、あまりにも周囲の状況にそぐわないキャラクターは、無意味に怪しい。ある程度慣れたプレイヤーには間違いなく警戒されてしまう。周囲に染まらないことには、何らかの理由があるはずなのだ。無論、それを敢えて利用して、印象付けるという手もある。

・告白はタブー

「ずっと好きでしたっ!」
「・・・マスター、殴っていい?」

 ここまでの話を考えれば分かると思うが、告白シーンは極めて難しい。分からない人は、鏡の前に立ちそのシーンを、その台詞を言ってみればいい。否応なく思い知らされはずだ。

 やり方次第では?

 甘い。かつて我が団のKという男は、鏡の前で苦悶しながらも何度となく告白シーンを練習したにもかかわらず、本番での「キモい」の一言で叩きのめされた。加えて、練習を妹に目撃されてしまいおかーさーん、お兄ちゃん狂ったー!!」と報告されたという。

 そういうわけで、告白シーンはをどうしても入れたい場合は、シナリオの序盤ではなく、状況的な逃げ場を完全に塞ぎ、うんと言わざるを得ないところまで追い詰めてからしかない。

 厳密には告白シーンではなかったのだが、別のセッションで同じくKがTという団員(無論、男である)相手に、袋小路に追い詰めた上でラブシーンを強要したことがある。その際、Tは頭を抱えのたうち回りながら叫んだ。

 「嫌だああああああっ!!Kさんに犯されるーっ!!!」

 10分ほどセッションは中断した。

・色気はタブー

 「隣に座った彼女から、微かにワキガの匂いが・・・」
 「お前、そんな趣味がっ!?」

 現時点において、私は大人の女性の色気をセッション中に違和感なく、正確には誰にも不快感を与えずに表現する手段を知らない。

 この業界の人間にロリコンが多いということもある。処女信仰も篤い。二十を過ぎると、見向きもしてくれないプレイヤーがいかに多いか! 分かっていながら、三十、四十過ぎのヒロインを私はよく使うのだか。

 それはさておき、色気は性欲と密接に絡んでいるというところに問題がある。これまで雰囲気だけでプレイしていたところに、欲求の一つである性欲が絡んでくると、まず多くのプレイヤーにテレが出てくる。すると我に返ってしまうのだ。

 目の前にいるのは美女ではなく、いかついマスターだ! こんなのとラブシーンは嫌あああああっ!!!

 そういう訳で、対応できるプレイヤーが限られてしまうのだ。

 また、少女系のように萌え記号が、ある程度万人受けするものであればよいのだが、生憎色気に関しては細分化が激しく、プレイヤーの趣味嗜好によって反応がまるで異なってしまう。

 表題下の例のように、マスターの感じる色気が、プレイヤーにも適用されるとは限らないのだ。マニア系の雑誌で入手した知識だが、私にもワキガのどこがいいのか、さっぱり分からない。

 以上の理由により、プレイヤーが不確定の場合、色気を全面に押し出すのは極めて危険である。

LUST LESSON ヒロインは生きている

 ここまでプレイヤー、マスター共に男性であることを想定して書いてきた。業界の担い手の大部分が男性であるということもあるが、女性の方がラブシーンに対する耐性が強いということもある。

 また、描写さえしっかりしていれば、彼女達は目の前の醜い物体は無視してくれるので、ある程度はやりやすい。

 そのかわり、ヒロインに向ける目は男性プレイヤー以上に厳しいので、よりその心情に共感できるよう、また心の動きに違和感がないようにシナリオを組む必要がある。これらを踏まえて、状況的記号を活用して貰いたい。

 さて、多くのシナリオ場合、ヒロインという存在はプレイヤーを誘導するための引きである。早い話、報酬や経験点と同列の存在である。無論、物理的な数値による満足と、精神的な達成感とは大きな隔たりがあるので、プレイヤーにとっては別物であろう。

 だが、マスターはこれを理解する必要がある。ルールにもよるが、最近のストーリー重視型のゲームにおいては、PCの目的がはっきりしていることが多い。

 ヒロインそのものが目的の場合もあるし、目的に反する立場を取ることもある。だが大抵の場合、プレイヤーがヒロインに魅力を感じていないと、シナリオそのものが成り立たなくなる。

 これは市販のシナリオでもそうだ。にもかかわらず市販のシナリオでも、魅力をどう表現するか描写されていない事が多い。せいぜい1~2枚の絵があるか、一回イベントがある程度だ。

 これで引きとして活用しろというのは酷だ。これまで説明してきた各記号の活用は、ヒロイン達(別にヒロインでなくても使えるが)をシナリオで使えるようにする技術である。

 シナリオを書くとき。他人の書いたシナリオを読むとき。そこにヒロインがいたら、どうやって彼女達を魅力的に思わせるか考えてみよう。

 シーンを増やしてもいいし、イベントに手を加えてもいい。ただ漫然とシナリオを読み返すのではなく、ヒロインをはじめとするNPC達をどうプレイヤーに理解させるか、そういう目的をもって読み返してみよう。

 プレイヤー達がヒロインを生きた人格として認めると、セッションは大いに盛り上がるはずだ。ちなみに私の書くシナリオでは、PCとヒロインが敵対したり、結果として助けようとしたヒロインをPC自身が手にかけたりという事が多い。

 感情移入に成功したときのプレイヤーの苦悩は、見ていて格別である。是非、試してくれたまえ。

(注:あまり人として感心できる行為ではありません)

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