« hekc080603データの生成と解釈:ラベルの貼り方 | トップページ | hekc080702行為と判定:見せ場の単位 »

2008年11月24日 (月)

hekc080701行為と判定:行為の解体

行為の解体
 TRPGにおける行為とは判定、つまりルールに沿って効果を決定することだ。(→hekc080403効果と演出)今回は行為から判定への流れについて考えたい。題して、行為の解体。

起承転結
 当倶楽部は行為と判定の運用モデルとして起承転結を採用し、泉に湧き出た清水に例える。その流れを5W1Hの要素を埋めながら追って行こう。

Hekc080701_3

湧き出した泉~起
 行為にはそれを成り立たせる材料が必要だ。いわゆる5W1Hにおける「when(いつ)」「where(どこで)」などの舞台的要素と「who(だれ)」が示す行為者である。中でも行為者は重要だ。動かせない設備が必要であったり、決まった時間にすることでない限り、行為は行為者がしたいと思うときに起こる。彼が実行の一歩を踏み出したとき、清水は泉に湧き出るのだ

満たされる器~承
 湧き水が泉を満たし始める。ここで焦点となるのは5W1Hで行為者の動機にあたる「why(なぜ)」と手段や過程を示す「how(いかに)」である。

 行為者の担当は意図を持ってキャラクターを動かして欲しい。キャラクターがいかにしてそれを成すか、なぜその手段を使うのか? それは楽しい(苦しい・悲しい)か? これらの意図を用意しなければ行為の過程を組み立てられない。

 行為がもたらす効果と行為者の目的は、必ずしも直結しない。例えば妻を殺して保険金を得ようと夫が「殺人」を起こすとしよう(物騒だな)。殺人とは「誰かの命を奪う」行為だが、行為者の目的は対象の死ではなく「お金」である。宝くじで1億円もらっても別に構わないのだ。

 キャラクターが「なぜ」するかが決まれば、次は「いかに」するかだ。このとき問題になるのは行動宣言の細かさである。基本的にはキャラクターの身体の動きが分かるレベルで行動を宣言すること。

 加えて行為の際に生じる音や匂い、足跡など、副次効果も頭に入れておく。これらは行為を間接的に示すに留まる。うまく使えば他のキャラクターがいきなり真相に行き着くのを防いでくれるだろう(何かが起きていることだけ分かるのさ)。

溢れ出す瞬間~転
 湧き出た水は泉を満たし、遂には淵から溢れ出す。承の段階において行為者はコツコツと実績を積み重ねる。そして条件が満たされると転に入り判定する。

 サイコロを振ってしまったら後戻りはできない。つまり、結果を固めたければサイコロを振れば良いのだ。逆に言えば、事態を調整の効く状態にしておきたいなら判定してはいけない。口頭でやり取りしている間はまだ融通が利くのだ。

 5W1Hで最後に残ったのが、行為そのもの≒「what(なに)」である。基本的に当倶楽部は効果で行為を捉える。まず「何が起こるか」だ。

残された跡~結
 水が流れ去った後には跡が残る。転で行なわれた判定の結果が、揺るぎない事実としてゲーム世界に出現する。行為は明らかな影響を世界に残すのだ。ストーリーの大枠は決定され次の展開へとつながって行く。

 起承転結はそれ単体で終わるわけではない。結すなわち行動の終わりには跡が残る。そして残された跡は次の展開を呼び寄せる。行為はそれ自身の起で突然起こるわけではない。(→hekc080401連続の法則)その前に起きた別の行為の結果を受けたものだ。結は終わりではなく新しい行為の起に続いていくのだ。

分岐点を探せ
 行為が始まり、事態が進み、成否の分岐点があり、決着が着く(この分岐点が判定だ)。分岐点に注目したこのモデルはものごとをシンプルに捉える。野球の試合におけるピッチャーとバッターのかけ引きも、結局は投げたボールにバットが当たるか当たらないかだ(当たればファールかヒットかホームランだ)。複雑に見える行為も結局は分岐の組み合わせだ。

 ただし成否2択しか決められない判定ルールしかない場合、我々にとっては表現力が足りないものと映る。成否2択は分岐の最低単位だが、否の方にも具体的な内容がないクローズなものなら、事実上の1本道だ(この否はただの行き止まりだからな)。

 ストーリーエンジンとして使えるのは、それぞれの分岐に具体的な内容のある、オープンなものだ。(→hekc080202ストーリーエンジン)成否2択をまず挙げているのは、あくまでも単純化のためだ(分岐点を掴むためだ)。

ルールへの収束
 当倶楽部は起承転結を、取り敢えず口頭でやり取りする承までの段階と、判定で白黒を着ける転からの段階に2分する。どんな状況になったら、何をしたら、判定するのか? これを見極めておけば、ゲーム展開に慌てることなくセッションに臨める。

 基本的に当倶楽部ではキャラクターが行動を起こしてもすぐには判定しない。まず周囲の状況を確認し、対象との予備的なやり取りをした後、いよいよとなったらサイコロを振る。つまり会話の中からルールを使うべき事柄を拾い上げる。判定の“アタリ”を付けていくのだ。

 ルールとは作品がわざわざ用意して来た“ウリ”の部分だ。その作品を楽しむのにこれを使わない手はないだろう。ルールに沿って行動の結果を決める判定は、その作品ならではの展開を生み出す(はずだ)。(→hekc080403設定の海、ルールの島)

 ストーリーテリングの観点からも、ランダマイザーを使って展開を決める判定は、ほかのジャンルにはない独自の部分だ。これをおざなりには扱えない。(→hekc080202(後書き))

より細かく、より大雑把に
 世の中には一言で結果を求めるには性急過ぎることがある。外から見ただけで正確な状態が分からないことも多い。行動してすぐに結果が分かるとは限らないということだ。

 殴った相手が気絶したか、倒れただけか確認するにも、自分の目で観察して確かめなければ分からないはずだ。剣で切りつけてすぐに死んだとか気絶したと分かるのが、実はおかしいことに気がついて欲しい(熟練者なら手応えとかで分かるんだろうけどね)。

 特に焦点になる事柄はより詳しく描写したい。キャラクターたちの行動を一言で片付けないためにはその過程を細分化する必要がある。これが起承転結への分解だ。

 さらに起承転結がつながる性質を使えば、描写の粗密を調節できる。区分けの単位を小さくすれば起承転結の中をさらに小さな起承転結に分けられる。逆に焦点でないことは区分けを粗くして起承転結をまとめて1つにしてしまえば良い。

Hekc0807012_5 振らない判定
 キャラクターが走る、剣を振るう、銃を射つ、本を読んで何かに気付く、誰かに用事を頼む、こうした行為を判定するのは珍しくない。しかしただ道を歩く、文字を判別する、一言に声をかけるなど、ちょっとしたことを判定するのはどうだろう?

  今その行為に本当に判定が必要か考えて欲しい。当倶楽部では諸々の状況や能力から見て、明らかに可能なことは判定を省略するべきだと考えている。前述した“アタリ”を付ける段階で、判定の必要なしと判断した場合は、判定せずに効果を設定するものとしたい(アドリブだぜ)。

 特にキャラクターが普段よく行う行為は、本人も成功の条件をある程度は自覚しているはずだ(いつも判定が必要ということは、もともと不安定なか、本人のあまり理解していないことと言える)。

 「曖昧さとの峻別」は判定の持つ側面の1つだ。我々はこれを尊重するために「振らない判定」で判定を減らす。その代わり、振ったときはその結果を十分に反映させる。機会を絞る代わりに、どんな結果が出ても受け入れるということだ。受け入れる準備ができていないのなら、判定すべきではない。

行為と判定の溝
 「振らない判定」にはルールを使うには弱過ぎるちょっとした効果をフォローする機能がある(剣で敵に切りつけるときは判定する、その前に剣を抜くのは判定なし)。

 特に軽微な魔術的効果は擬人的世界をゲーム世界とする当倶楽部には欠かせない。(→hekc080601追伸:物言わぬモノたち)しかし魔術といわれるととにかく判定を課している作品が多い。我々としては、ある程度詳細な設定や基準があれば判定は必要ないと思うのだ。(→hekc080403アドリブの正体)

 ルールがない事柄は無視、逆に何にでもルールを当てはめて判定する。どちらの態度も、演技や演出、ひいてはストーリーの生成に支障をきたすに違いない。

 そこで「振らない判定」を増やすことで行為と判定の溝を埋めたいのだ。サイコロを振って達成値を出せばキチンとした手順を踏んだような気になるが、実体が伴わなければ意味はない。その行為の詳細やメカニズムを明らかにするときに使うモデルが起承転結だ。

過程と結果の逆転
 TRPGの判定にはサイコロが使われる。それは担当者が決定できるキャラクターの行動内容には限界があり、最終的には詳細を指定できないブラックボックスが発生することを表わしている。

 この点から、判定の事前描写に関しては、当倶楽部が標準とする身体の動きが分かるレベルと、そのときのルールが示すレベルとの間で動作の細かさの調整が必要になるだろう(余談だが、複数の行動を一回のロールで判定するルールの場合、より大雑把になる傾向がある)。

 さらに言えば、判定をしてから細かいところを後付けで決定することになる。当倶楽部は判定そのものは表現しないでおくべきだと考えている。つまり、決定的動作を宣言した後に、描写も台詞も廃した空白の時間(判定中)があり、それが終わってから詳しい行為の描写が行われるのだ。

 結果から詳細が決まり描写されていく逆流現象。これがTRPGが他のジャンルと決定的に異なる部分であり、この特徴を生かすために判定自体は、後付けで描写したいのだ。

*  *  *  *  *
 判定はキャラクターの行動を直接表現し、その作品で「何ができる=表現できるか」を教えてくれる。自分にあった作品を探す基準の1つは判定だ。作品の中で判定がどのように位置づけられ、用意されているデータがいかに判定に関わるか? これを見れば作品の構造が分かる。振ること、それがTRPGシステムの根幹なのだ。

振ることが
TRPGシステムの根幹なのだ

|

« hekc080603データの生成と解釈:ラベルの貼り方 | トップページ | hekc080702行為と判定:見せ場の単位 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126999/25388810

この記事へのトラックバック一覧です: hekc080701行為と判定:行為の解体:

« hekc080603データの生成と解釈:ラベルの貼り方 | トップページ | hekc080702行為と判定:見せ場の単位 »