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2007年2月 5日 (月)

団長閣下の暴言07

悪代官たちの戦略論 

INTRODUCTION

 かつて我が黒骰子団の団員島崎(仮名)は言った。

 「悪党には2種類あります。事が起こったとき、団長や佐野(仮名)氏のように殴って全てを解決する人間と、私のように殴られてもどうやって金を稼ぐか考える人間です」

 私は無言で彼を殴った。 誰が悪党だ。

(黒骰子団編集部注1:えっ!?違ったんですか?)

 彼の言葉のある一面は真実である。 あらかじめ断っておくが、私が悪党という部分は間違いだぞ。真実なのは、悪党の行動指針の部分だ。

 そして、ゲーム中でも現実においても、彼の言う金を稼ぐ奴の方が数段性質が悪い。まあ金を稼ぐというのは比喩で、実際には対象が金のときもあるし、物や権力などが対象になる場合もある。

 こういう悪党は多くのゲームおいて、下手に攻撃できないイヤミな敵として、極めて重要な位置を占めている。

 水戸黄門で言えば、越後屋や悪代官、それらを裏で操る側用人柳沢吉保といったボス級のキャラクターだ。我が団では、プレイヤーキャラクターの場合も多いが。というか、あれは地か。

 これらのキャラクターを演じるのはともかく、実際の彼らの悪事とその戦略に関しては、表現が難しいとか、相当頭が良くないと思いつかないとか思われがちである。

 まあ実際、多くの手下を手足のごとく操りつつ、他の勢力に睨みを効かし、尚且つ一般人には縁のないレベルの銭もーけをしようという時点で、やるのはよほどの自信家か大馬鹿なのだろう。

 が、私の経験から言って、それっぽい悪事や組織の動かし方を表現するだけなら、そう難しいことではない。何しろ、本当に組織を運営している訳でも、本当に敵がいる訳でもない。

 運営のために予算のやり繰りや、接待、調査、部下の育成などといった実務的な手間は一切ないのだ。ただ、自分の頭の中で、こーゆーことをしているんだ、こういう結果になったんだと妄想するだけだ。

 その妄想を、深く深く考えるだけで、プレイヤー達は勝手に苦しんでくれる。何とすばらしい!

 という訳で、今回は悪人の演じ方、戦略編だ。

LESSON1 なまえのないかいぶつ

 取り敢えず、いきなり組織の運営を考えるのは乱暴だ。まずは個人か小人数の組織における悪事のやり方と、心構えを学ぶことにしよう。

 まず大前提として、個人や小人数であるという事は、絶対的に自分が不利だということを肝に銘じて欲しい。たとえその個人が鬼のように強くても、組織にはまず敵わないのだ。

 人間には多くの場合、複数の弱点がある。それは物理的強さかもしれないし、経済的なものかもしれない。家族や周りの人間が弱点になることもあるだろう。政治家ならば、自らの名声は武器であると同時に、絶対的な弱点になる。

 そして、小人数ではこれら全てをカバーするのは、極めて難しい。対して組織は、多くの構成員がいる為、これらの弱点の全てを効率よく攻撃できる。これでは、よほど理不尽な強さを持っているか、頭が良くない限り勝てない。

 ならばどうすれば良いか。最良の手段は、相手に自分を認識させないことである。

 例えば、殺し屋が事故を装って目標を殺害したり、火曜サスペンスの殺人犯がアリバイを用意したりするのが、これにあたる。事故ならば、復讐がどうのという話もないし、アリバイがあるなら捜査の対象から外れる。

 つまり、仮想敵が自分を敵だと思わないように、細工をするのだ。それが無理ならば、いざというときに頼りになる友達を多く作ることだ。

 王様や、警察のお偉いさん、町奉行、有力なヤクザ、傭兵、近所の洞窟のゴブリン等に日頃から付け届けをしたり、恩を売ったりして、いざというときに助けてくれるよう誘導しておくのだ。

 この付き合いは、細かいことでも良いからまめに行う。

 例えば、自分がたまたま知った事件の裏側の情報を、ヤクザや警察関係等欲しがりそうなところに回したり、雇った人間の待遇をよくしたり、たまに安い酒を振る舞うだけでもゴブリンやオークなら喜ぶだろう。事が済んだ後の、アフターサービスも忘れないようにしたい。

 更に気を使いたいのは、余分な敵を作らないことだ。 不必要に多くの人間を威嚇したり、攻撃したりするのは避けたい。攻撃するターゲットは、なるべく少なくなるよう絞る。法がある世界なら、普通以上に法を厳密に守るべきだ。

 小人数では確実にこなせる仕事も知れている。予定外の敵を作れば、対応し切れない部分が出てくる。多くの時代劇では、旅をしている主人公に対し、地元の悪人がちょっかいをかけて敵にしてしまうというパターンが多く見られる。

 知らない人間は、どのような能力を持っているのか、分からないのだ。たとえ相手が縮緬問屋の隠居や、胸に七つの傷がある旅の独り者でも、その正体が分からない以上、手を出す愚は犯したくない。

 また、誰かを攻撃する際、自ら矢面に立つのは避けるべきである。小人数や個人の場合、自身のもつ戦力や力は知れている。従って自ら攻撃を行った場合、反撃によって自身が大きく被害を受ける可能性がある。

 大きな組織ならば、それでも耐え切れるだろうが、小人数では一人が死んだり捕まったりすれば、致命傷に成りかねない。個人ならば言わずもがなだ。

 可能ならば、自分とは関係のない個人や団体を、目標と敵対するように誘導してぶつけるのが最善だ。自分自身は誰にも気づかれないように、影からのサポートに徹する。

 水戸黄門の宿敵、柳沢吉保は、幾つかの部全体の黒幕だったが、実際に水戸黄門に刺客を送った実行犯は、欲に目のくらんだ現地の家老や重役である。

 その為、水戸黄門自身も完全に処断する事ができず、次の部では性懲りもなく悪事を繰り返すというパターンが多かった。これなど、なかなか見上げた悪党ぶりだった。

 最後に、最も重要なのが疑り深いことである。
 個人や小人数の組織は、余程力がない限り、他者にとって大きな価値はない。従って別の大きな勢力の圧力や、金によって容易に裏切られる可能性がある。

 全ての情報や、協力者の言動に疑いの目を持って対応しなくてはならない。無論、相手にそれを気づかれれば、不快感を与えかねないので、表に出してはならない。

 これらを総合すると、優秀な悪人の一つ典型が浮かび上がってくる。社交的で友達(しかも官憲から裏稼業まで)が多く、親切で法もしっかり守る。恐らくは町の名士。何故か周囲ではきな臭い事が多く起こるが、本人は間違いなくそれらにノータッチ

 どこかで見たことがないか? そう、政治家だ。

(注2:全ての政治家が・・・という訳ではありません。・・・そうですよね?)

 無論人間だから、上記の全ての事項を忠実にこなすのは極めて難しい。表沙汰になった政治家の汚職事件を紐解けば、多くの場合上記のどれかを失敗したが為に、悪事の一つが露見している。

 そしてそこから、その裏に隠れていた余罪が次々と発覚するというのが、一般的なパターンだ。逆に言えば、彼等はそれまで上記の悪党の心得を忠実に守っていたのだ。

 これらから、悪事を考えるにあたって、政治関連の週刊誌記事は、極めて優秀な教科書と言える。交友関係から詳しい悪事の手口まで載っていて、実に為になる。
 まずは、ここから始めてはどうだろうか?

LESSON2 今日から我が社もK○D、入って安心KS〇・・・

 悪の組織、何と甘美な響きであろうか。ショッカー、蛇頭、ボーゾック、オウム真理教、電柱組、自〇党・・・様々な悪の組織が、現実非現実を問わず存在している。

 では、いよいよ悪の組織の運営だ。もっとも、基本はLESSON1の個人や小人数の組織の運営と同じである。

 とは言え、ある程度図体のでかい組織である以上、基本をこなせない部分や、対応が異なってくる部分も多い。それらを中心に語ることにしよう。

 組織にとって情報の効率化は必須課題である。小人数ならば、誰か捕まった時点で秘密もくそもなくなるが、大人数なら末端が全ての情報を知る必要はないし、知っていてはならない。

 組織が大きくなった時点で、隠密性は落ちるのだから、末端が外部に情報を漏らしてしまう危険性は常にある。従って末端には、いつでも切り離せるように、必要最低限の情報しか与えてはならない。

 逆に組織のリーダーは、なるべく多くの情報を手に入れ、それらから総合的に事実を割り出す必要がある。だからといって、下から上へ全ての情報がなだれ込めば、対応しきれない。

 そこで行うのが情報のカースト化だ。まず、機密保持の観点から、全体の悪事の情報は、重役になるほど詳しく知らせ、末端は自分がどのような役割なのかすら知らせなくて良い。逆に現場の細かい状況は、下に行くほど詳しい。

 末端の構成員をまとめる上司は、彼等がもたらす情報から、組織にとって必要と思われるものをピックアップし、その上司に報告する。その上司は自らの立場から見える全体を踏まえて、上がって来た情報を更にまとめ、その上司に報告する。

 これを繰り返すことで、リーダーは全体的な観点から、組織がどう行動すれば良いかを知ることができるのだ。

 悪の組織の泣き所に示威がある。本来悪事は隠さなければならないものなのだが、他の組織との兼ね合い上、組織の力を見せなければならない場合が、往々にしてある。

 早い話が、怪我を覚悟で相手を殴るのだが、このとき注意しなくてはならないのが、周囲である。余分な敵を作らないようにするのは、個人であっても組織であっても重要だが、示威行動は派手になりがちで、結果として多くの無関係の人間を巻き込みかねない。

 無関係の人間に多くの被害が出ると、どこで思わぬ敵とつながるか分からない。派手にやりつつ、実質的な被害は対象のみに出るよう図りたい。また、この示威行動のやり口は、組織の方向性がはっきり見える為、ゲーム内の表現としては重要な要因となるだろう。

 犯罪組織に限らず、組織では様々な理由で欠員が出るものである。犯罪組織は特に、危険と隣り合わせな分、突然に欠員が出やすい。欠員が出たとき誰がその穴を埋めるのか、緊急時に誰が判断を下すのか程度は決めておきたい。

 その意味では、一番欠員が出るとマズいポストはリーダーである。影武者や、副官、親衛隊等はこれを防ぐために存在する。もっとも、これらに裏切られる可能性も多々あるので、信用し過ぎてはいけないが。

 このような事情を踏まえた上で、ゲームで組織を考える際には、No.2、No.3のポストにいる者が、No.1に対してどのような思いを抱いているのかまで考えて、意見の対立等を表現すると深みが出る。

  悪の組織が巨大化し、それを維持するとなると、単に暴力や金だけでは対処できなくなってくる。これは組織が悪という方向性を持っている以上、いずれは最大の組織である一般社会と対立するからである。

 これに対処するには、方法は二つしかない。

 一つは一般社会以上の力を自ら持ち、その力をもって服従を強いる方法。早い話が世界征服である。デストロン、不知火忍軍、クロノス・・・古来より数多くの悪の組織が、この単純かつ難儀な目標の元に日夜邁進していた。

 彼等は単に征服欲の為だけに、この荒唐無稽な目標を打ち立てたのではい。彼等はそうしなければ、自分たちのより所である組織を維持できなかったのだ。 だが、この方法はあまりにも難しい。

 そこで、現実世界では多くの組織がもう一つの方法を選んだ。社会にとって必要悪になるという方法である。つまり、いなくては困る存在にするのである。その為ならば、多少のことには社会が目をつむるように仕向けるのだ。

 分かりやすいように例を挙げるなら、あの眼鏡魔人B・G氏率いるマ〇クロソフトなどその最たる物だろう。

(注3:ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・)

 事実上、世界で最も苦情の殺到する組織であるにもかかわらず、無くなると世界中が困るくらい浸透してしまっている

 そこまでしなくても役に立つ組織として、地元なり一部の系統の人々なりに根付ければ、今度は彼等が外の社会から自分達を守ってくれるのだ。

 麻薬を使った犯罪は、一度使った人間が再度麻薬を必要とする為、彼等をほぼ確実に自分達の味方にできる。中毒者は法的にも、薬を手に入れる為にも、味方にならざるを得ない。これも、一つの根付き方だ。

 ゲーム的に考えると、単に世界征服を行う組織より、社会に根付いた組織の方が数段怖い。何しろ、どこに組織の協力者がいるのか分からないのだ。

 個人で組織を相手にする場合、最も怖いのは周囲が全て敵に見えるときである。従って、これをうまく表現できれば、プレイヤー達の表情は愉快なものになってゆくだろう。

LESSON3 かいぶつがこんなにおおきくなったよ

 では、次に実際に犯罪を行う際の注意点を見てゆこう。

 まず第一に、目標とその周囲に対する情報は十分だろうか?周囲というのは目標に手を貸しそうな人物や、組織のことだ。戦いにおいて、相手の力量を見るのは当然だが、戦うのが相手だけだとは限らないのだ。

 次に準備や戦力は十分だろうか?犯罪は失敗ができない作戦行動である。下準備は充分すぎるほどしても構わない。一般的に、優秀な指揮官ほど無理をしないというが、それは犯罪においても同じである。

 守りは大丈夫だろうか?ここで言う守りとは、物理的な防御より、むしろ機密の保持に重きを置く。はっきり言うと、「ばれなければ、犯罪ではない」のだ。

 また、機密が漏洩した際の対策も、練っておくべきだ。役人、マスコミ、情報屋等はあらかじめ友達になっておこう。

 作戦に穴は無いだろうか?本当に穴がなければ、その犯罪は必ず成功する筈だ。実際には、んな事はないが。

 大抵は、どこかに予想外の部分が出てくる。第一、穴がなければ、プレイヤー達に勝ち目がないではないか。大抵の物語において、主人公は誰も予想していなかった穴の部分にいる為に、物語の中心たり得るのだ。

 TRPGが自由を標榜する以上、多少の例外はあるだろうが、PC達にも同じことが言える筈だ。マスターなら適度な穴は残しておこう。逆にプレイヤーの立場なら、ギリギリまで穴をつぶして立ち回ることだ。

 最後に、逃げ道は確保してあるだろうか。本当の悪党は、常に逃げ道を確保しているものだ。物理的な逃げ道に限らず、スケープゴートや、法の抜け穴等もそうだ。もっとも、最後まで悪党らしく、華々しく散りたいというなら、それはそれで一つの手だ。

LAST LESSON お主も悪よのう・・・

 私は悪事を考えるのが好きだ。正確には悪事そのものより、その証拠をいかに消すか、いかに確実に達成するかという方法を考えるのが好きだ。

 主に犯罪関係のニュースを見ていて、自分ならどうするかと考えることが多い。これはシナリオを考えるのにも役に立つし、プレイヤーをやっていても、少なくとも我が団では役に立つ。

 我が団の場合、どういう訳か悪党のPCがやけに多い為、セッションは悪党対悪党という図式になり易い。悪党対正義の味方という形なら、ある程度の力押しは可能だ。

 かつて某時代劇で、里見浩太郎扮する主人公が「証拠は?」と尋ねる悪党に対し、「闇奉行に証拠はいらねえんだよっ!」と叫んでぶった切るという、ミもフタもないシーンがあったが(しかも毎週)、所詮相手は悪党なのだ、倒してしまえば大抵の場合解決できる。無論、マスターがそれを許せばだが。

 だが、悪党同士ならそうはいかない。正義の味方は初手から土俵が違うのだ。同じ土俵で戦うなら、自然とマスターや他のプレイヤーとの知恵比べとなる。

 しかも、悪党同士の場合、必ずしも相手を倒す必要は無い。正義の味方と違って、共存の道を探ったり、逃げを打ったり、長い物に巻かれたりといった様々な手段が取れる。そのあたりの見極めが、実に楽しいのだ。

 ただし、これはゲームだからである。かつて私は島崎(仮名)に尋ねたことがある。

 「お前、普段から悪人なのに、何でゲームでまで悪人をやるんだ?」
 「悪事ってのはね、難しい上に手間がかかるし、ドロ臭いし、なかなか割に合わないくせに、失敗すると大変なんすよ。その点、ゲームの中なら、能力とロールプレイ次第で、どんな悪事だってできます・・・って、誰が悪人ですかっ!」
 「お前」

 やはり現実は厳しいらしい。

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